公開日:2023/09/06 /
緑茶を輸出する際に、必ず確認しなければならないことを解説しています。
緑茶輸出にチャレンジする人は必見のページとなっております。
1.はじめに
ここ最近で円安が進み輸出関連企業にとっては追い風の状況が続いております。
ここ数年の日本食ブームに加え、コロナ禍から徐々に回復傾向にあり国内で開催されている国際展示場は賑わいを見せており、その中でも日本人が愛する代表的な飲み物【日本茶】が外国人から注目を集めております。
今回は日本食には欠かせない日本茶の輸出について解説します。
2.緑茶の輸出動向
政府は日本の農林水産物を今後2025年に輸出額2兆円、2030年には5兆円を目標として更なる輸出拡大に向けた取り組みを行っています。
輸出重点品目(※)として、「茶」も選定されており、この10年間で緑茶の輸出量は大幅に増加し、輸出先の国や地域も拡大しています。
※輸出重点品目:海外で評価される日本の強みがあり、輸出拡大の余地が大きいとした29品目を農水省が選定したもの
令和3年の緑茶の輸出額は204億円と、過去最高額を記録しました。
以下、2018年から2022年までの日本茶輸出上位6各国の「輸出量」「輸出金額」「輸出単価」をグラフにしました。
引用データはこちら
✍上位6カ国(2022年時点)
- アメリカ
- 台湾
- ドイツ
- カナダ
- シンガポール
- 香港
✍輸出量の推移
輸出量はアメリカと台湾が過去5年に渡って3位以下を大きく引き離しています。
この2カ国が日本茶の輸出を牽引していると言えます。
全体的に上位6カ国は若干の右肩上がりになっています。
日本茶の海外市場は成長していると見て取れます。
✍輸出額の推移
輸出額に関してはアメリカがダントツで1位です。
輸出量の増加に伴い、金額も大きくなっています。
一方台湾は、輸出量が多いにも関わらず、輸出額は控えめになっています。
輸出量と輸出額は必ずしも比例しないようです。
✍キロ単価
輸出量と輸出額が比例しないので、キロ単価を調べてみました。
なんと、輸出量2位の台湾がキロ単価が6位です。
台湾では比較的安価な日本茶が浸透しているようです。
その他の国では、単価の高い日本茶が流通しています。
輸出先の国の選定にお役立ていただければ幸いです。
3.主なお茶の産地
日本のお茶の三大産地は、静岡県・鹿児島県・三重県となっており、生産量日本一の静岡県の生産量は29,700tと国内で生産されるお茶の約40%を生産しています。
第2位の鹿児島県の生産量は26,500tとなっており、国内で生産されるお茶の約35%を占め、静岡県と鹿児島県の2県で、国内で生産されるお茶の約70%が生産されています。
品種別の主な産地では以下のとおりです。
- せん茶 :静岡県、鹿児島県、宮崎県
- かぶせ茶 :三重県、福岡県
- 玉緑茶 :佐賀県、熊本県
- 玉露・抹茶:京都府
4.輸出前に確認すること
輸出してからでは取り返しがつかないので確認しておきましょう。
✍福島第一原発事故の各国の対応について
福島第一原発事故から12年以上経過し規制は徐々に緩和されつつありますが、まだあります。
輸出先上位6カ国は以下のとおりです。
❏アメリカ
2021年9月に輸入規制を全て解除。
❏台湾(2022年2月21日時点)
静岡県産の茶類については《放射性物質検査報告書》と《産地証明書》が必要です。
【台湾側の水際検査】
- 福島、茨城、栃木、群馬、千葉県産品については、全ロットの検査が実施されます。
- 上記5県以外の産地の茶葉は水際検査結果等に応じて検査頻度が調整されます。
❏ドイツ(EU、ノルウェー、アイスランド)
2023年8月15日に輸入規制をすべて解除。
❏カナダ
2011年6月13日に輸入規制をすべて解除。
❏シンガポール
2021年5月28日に輸入規制をすべて解除。
❏香港
輸入規制はありません。
✍輸出先国側の規制について
輸出先国・地域により輸入するための規制が異なり、輸入許可や輸入ライセンスが必要となる場合があります。
輸出先国・地域と日本とでは使用可能な農薬成分の残留基準値が異なります。
日本の残留農薬基準値を満たしていても輸出先国・地域の残留農薬基準値を満たせずに輸出できない場合があるので注意が必要です。
輸出先国・地域で通関を行うにあたりどのような書類が必要で、どのような点に注意すべきか輸入者に対して事前に確認しておきましょう。
各国の残留農薬基準はこちら
※本基準値は、調査時点の数値であり、その後変更されていることがあります。輸出前に輸出先国の関係法規を確認して下さい。
✍輸出先国における関税率について
下記の輸出先国・地域の場合、特定の書類を輸出先国・地域に提出すれば関税の軽減又は免除を受けることが出来ます。
2023年9月現在の緑茶の経済連携協定(EPA)の現状をまとめました。
EPA適用国 (協定名) |
基本税率 | EPA税率 | 証明書 ※証明書の説明は欄外に記載 |
---|---|---|---|
シンガポール | 無税 | ||
メキシコ (日メキシコ) |
20.0% | 関税割当税率 ※税率は要確認 |
第一種特定原産地証明書 第二種特定原産地証明書 |
メキシコ (CPTPP) |
20.0% | 無税 | 自己申告書 |
マレーシア | 無税 | ||
チリ (日チリ) |
6.0% | 無税 | 第一種特定原産地証明書 |
チリ (CPTTP) |
6.0% | 無税 | 自己申告書 |
タイ (日タイ) |
枠内:30.0% 枠外:60.0% |
枠内:無税 枠外:60.0% |
第一種特定原産地証明書 |
タイ (日アセアン) |
枠内:30.0% 枠外:60.0% |
第一種特定原産地証明書 | |
タイ (RCEP) |
枠内:30.0% 枠外:60.0% |
第一種特定原産地証明書 第二種特定原産地証明書 |
|
インドネシア (日インドネシア) |
5.0% | 無税 | 第一種特定原産地証明書 |
インドネシア (日アセアン) |
5.0% | 無税 | 第一種特定原産地証明書 |
インドネシア (RCEP) |
5.0% | 3kg以下包装で茶葉以外:3.5% その他:4.0% |
第一種特定原産地証明書 |
カンボジア (日アセアン) |
7.0% | 5.0% | 第一種特定原産地証明書 |
カンボジア (RCEP) |
7.0% | 3kg超の茶葉:6.3% その他:7.0% |
第一種特定原産地証明書 第二種特定原産地証明書 |
中国 (RCEP) |
15.0% | 12.3% | 第一種特定原産地証明書 第二種特定原産地証明書 |
ブルネイ (日ブルネイ) |
0.22BND/kg | 無税 | 第一種特定原産地証明書 |
ブルネイ (日アセアン) |
0.22BND/kg | 無税 | 第一種特定原産地証明書 |
ブルネイ (CPTPP) |
0.22BND/kg | 0.1BND/kg | 自己申告書 |
ブルネイ (RCEP) |
0.22BND/kg | 3kg以下包装:0.18BND/kg その他:0.22BND/kg |
第一種特定原産地証明書 第二種特定原産地証明書 |
ミャンマー (日アセアン) |
3kg以下包装:5.0% その他:20.0% |
15.0% |
第一種特定原産地証明書 |
フィリピン (日フィリピン) |
3.0% | 無税 | 第一種特定原産地証明書 |
フィリピン (日アセアン) |
3.0% | 無税 | 第一種特定原産地証明書 |
フィリピン (RCEP) |
3.0% | 無税 | 第一種特定原産地証明書 第二種特定原産地証明書 |
ラオス | 40.0% | ||
ベトナム (日ベトナム) |
40.0% | 2.5% | 第一種特定原産地証明書 |
ベトナム (日アセアン) |
40.0% | 無税 | 第一種特定原産地証明書 |
ベトナム (CPTPP) |
40.0% | 無税 | 自己申告書 |
ベトナム (RCEP) |
40.0% | 40.0% | 第一種特定原産地証明書 第二種特定原産地証明書 |
インド (日インド) |
100.0% | 3kg以下包装:無税 その他:100.0% |
第一種特定原産地証明書 |
チリ (日チリ) |
6.0% | 無税 | 第一種特定原産地証明書 |
チリ (CPTPP) |
6.0% | 無税 | 自己申告書 |
ペルー (日ペルー) |
6.0% | 1.7% | 第一種特定原産地証明書 第二種特定原産地証明書 |
ペルー (CPTPP) |
6.0% | 無税 | 自己申告書 |
スイス | 無税 | ||
オーストラリア | 無税 | ||
モンゴル (日モンゴル) |
5.0% | 固形の緑茶:1.4% その他の緑茶:無税 |
第一種特定原産地証明書 |
EU (日EU) |
3kg以下包装:3.2% その他:無税 |
無税 | 自己申告書 |
アメリカ (日米) |
風味付け:6.4% その他:無税 |
風味付け:3.2% その他:基本税率 |
自己申告書 |
カナダ | 無税 | ||
イギリス (日英) |
3kg以下包装:2.0% その他:無税 |
無税 | 自己申告書 |
ニュージーランド | 無税 | ||
韓国 (RCEP) |
枠内:40.0% 枠外:513.6% |
第一種特定原産地証明書 第二種特定原産地証明書 |
第一種特定原産地証明書とは
これらのEPAを利⽤するためには、⽇本商⼯会議所から第一種特定原産地証明書を取得する必要があります。
第二種特定原産地証明書とは
自己申告書とは
なお、《原産地申告書》の作成者が誰であるかに関わらず、輸出先国・地域の税関当局が、産品が原産品であることを確認するために追加で情報や資料を要求してくる可能性があります。
✍植物検疫検査について
緑茶(製茶)輸出については、輸出先国・地域の要求に基づき、植物検疫検査を受けなければならない場合があります。
植物防疫所より「植物等を輸出する場合の検疫条件一覧」がありますので参考にしてください。
なお、輸出先上位6カ国については「植物検疫検査無し」で輸出が可能です。
検査の詳細は【6.輸出通関「植物検疫検査」】で解説します。
5.輸出に必要な書類
輸出通関に必要な書類は以下のとおりです。
書類名 | 書類作成者等 |
---|---|
インボイス※ | 輸出者が作成。 インコタームズ、商品名、学名、個数、単価、金額、合計金額を記載。 |
パッキングリスト※ | 輸出者が作成。 商品名、材質、個数、重量を記載。 |
植物検疫証明書 | 日本の植物防疫所が発行。 ※検査が必要な国に輸出する場合に必要。 |
経済連携協定書類 《第一種特定原産地証明書》 《第二種特定原産地証明書》 《自己申告書》 など |
輸出者や商工会議所が発行。 ※輸出先国・地域が協定適用国の場合に必要。 |
福島第一原発事故対応書類 《放射性物質検査証明書》 《産地証明書》 《輸出事業者証明》 など |
地方農政局や放射能検査機関で発行。 ※輸出先国・地域が福島第一原発事故規制対象国の場合に必要。 |
※インボイスとパッキングリストは情報が重複する部分が多いので「INVOICE&PACKING LIST」として内容を1枚に集約しても構いません。
6.輸出通関「植物検疫検査」
輸出先国・地域が日本の《植物検疫証明書》の発行を必要とする場合、その国ごとに定められている条件を基に防疫官が検査をします。
※植物検疫検査を必要としない国もあります。
検査方法は、「貨物に害虫が付着していないか」「提出書類と貨物に相違が無いか」などを検査します。
検査は、全量を検査するのではなく、必要数量を抽出して検査をします。
抽出する量は、品種や輸出量により変化します。
検査は目視検査になります。
小売用の製品は茶自体を目視することが難しいことが多いので、余程疑わしいことがなければ外装表記の確認になることが多いです。
製品化されていない加工原料用の茶葉は一定の確率で開封検査が行われます。
以下、緑茶(製茶)の抽出量になります。
輸出数量 | 検査数量 | |
---|---|---|
~ 10kg未満 | 10%以上 | |
10kg以上 | ~ 500kg未満 | 1kg以上 |
500kg以上 | ~ 1,000kg未満 | 3kg以上 |
1,000kg以上 | ~ 4,000kg未満 | 8kg以上 |
4,000kg以上 | ~ 20,000kg未満 | 12kg以上 |
20,000kg以上 | ~ 70,000kg未満 | 20kg以上 |
70,000kg以上 | ~ | 30kg以上 |
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7.輸出通関「税関申告」
✍輸出HSコード ※2023年4月
❏緑茶(未発酵・正味3kg以下の包装)
- 粉末状のもの:0902.10-100
- 粉末状以外の形状のもの:0902.10-9003
❏緑茶(未発酵・正味3kg以下の包装以外のもの)
- 粉末状のもの:0902.20-100
- 粉末状以外の形状のもの:0902.20-900
✍税関へ申告
インボイス・パッキングリストをもとに《輸出申告書》を作成します。
《輸出申告書》にインボイス、パッキングリスト等必要書類を添付して申告します。
審査が完了し、問題が無ければ《輸出申告許可書》が発行されます。
※《輸出許可書》は輸出者がインボイス等の輸出書類とともに5年間保存する必要があります。
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8.輸送コスト計算の注意点
お茶という商品はその形状から「容積が大きく、重量が軽い」商品です。
このような商材は運賃算出について注意が必要です。
物流費用というのは「100kgの鉄」と「100kgの綿」では「100kgの綿」を運ぶ方がコストが掛かります。
綿のほうが輸送スペースを必要とするからです。
物流コストは、実際の重量(Actual Weight)と容積重量(Volume Weight)を比較して、数値が大きい方が採用されます。
海上コンテナはコストがコンテナ単位なので割愛します。
海上輸送 LCL(混載)と航空輸送に絞って解説します。
✍海上輸送 LCL(混載)の場合
LCLとはコンテナを満載にする物量がない複数の荷主を集めてコンテナを仕立てる方法です。
コスト計算の単位は実重量と容積重量の大きい数値が基礎となります。
実重量は、その商品そのものの重さです。
つぎに容積重量ですが、注意が必要です。
LCLの場合、容積1m3(1x1x1m)の商品は1,000kg扱いとする、
と定められています。
1,500kgの商品が容積1m3の場合、計算の基礎は1,500kgとなります。
100kgの商品が容積2m3の場合、計算の基礎は2,000kgになるので注意が必要です。
※なお、LCLの最小重量は1m3(1mx1mx1m)、1,000kgです。
容積0.5m3の場合や、重量500kgの場合、容積1m3、重量1,000kgとみなされますので注意が必要です。
✍航空輸送の場合
実重量はLCLと同様、商品そのものの重量です。
問題は容積重量です。
航空輸送の場合の容積重量は計算式があります。
航空輸送の容積重量=縦cm x 横cm x 高さcm ÷ 6,000
となっています。
例えば、容積1m3で100kgの商品において、容積重量は
1m3(100cm x 100cm x 100cm)÷ 6,000=166.67kg
となります。
この場合、運賃計算の基礎は100kgではなく166.67kgになります。
※国際宅急便(DHL、Fedex、UPSなど)は独自の計算方式になっていますので、注意しましょう。
軽くてボリュームのある商品は、実重量だけで考えると運賃が予想以上に高くなることがありますので注意しましょう。
9.まとめ
世界的な日本食ブームや、ヘルシーな食べ物の需要の高まりによりお菓子や飲み物のフレーバーとして「MATCHA」と言う名称で外国人に広く認知され始めており、輸出量も年々増加しています。
しかしながら、輸出するために様々な規制をクリアしなければならないハードルが高い商材の一つです。
国際情勢は常に変化しますので、注意しながら進めていきましょう!
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