清涼飲料水の輸出方法

清涼飲料水の画像

※このページは清涼飲料水の輸出にチャレンジする人が必ずチェックすべき点をまとめたページです。

 1.はじめに 

近年、日本は食品・農林水産物の輸出拡大に注力しています。

2020年3月、政府は2025年までに輸出額目標を2兆円に設定し、輸出増加傾向のある清涼飲料水を輸出重点品目として選定しました。

海外では健康志向の高まりからビネガードリンク、フレーバーウォーター(ミネラルウォーターに果汁等を加えた飲料)等の人気が高まっています。

新型コロナウイルス感染拡大の影響により、外出自粛や在宅時間の増加により飲用スタイルが変化し、家庭内での清涼飲料水の消費が増加したようです。

海外では、日本の清涼飲料水は、デザインやフレーバーの種類が豊富であり、飽きが来ないことが大きな魅力となっています。

 2.清涼飲料水とは 

清涼飲料水とは、アルコール分1パーセント未満を含有する飲料のことをいいます(乳酸菌飲料、乳及び乳製品を除く)。

トマトジュース、濃縮ジュース、凍結ジュース、ソーダ水、炭酸水、コーラ類、ジンジャーエール、ミネラルウォーター、豆乳、ガラナ飲料等の飲料は、全て清涼飲料水に該当します。

 3.清涼飲料水の海外市場 

☆輸出推移

まずは輸出金額と輸出重量の推移を見てみましょう。

輸出金額(百万円) 輸出重量(キロリットル)
1990 1,254〔-〕 7,891〔-〕
2000 02,650〔098.4%〕 009,643〔081.2%〕
2010 11,909〔118.1%〕 047,971〔114.7%〕
2011 10,193〔085.6%〕 043,253〔090.2%〕
2012 12,074〔118.5%〕 047,877〔110.7%〕
2013 12,353〔102.3%〕 050,555〔105.6%〕
2014 15,937〔129.0%〕 072,136〔142.7%〕
2015 19,738〔123.8%〕 081,432〔112.9%〕
2016 19,431〔098.4%〕 086,860〔106.7%〕
2017 24,505〔126.1%〕 104,979〔120.9%〕
2018 28,167〔114.9%〕 109,560〔104.4%〕
2019 30,391〔107.9%〕 126,747〔115.7%〕
2020 34,164〔112.4%〕 145,238〔114.6%〕

〔〕カッコ内は前年比
※税関HP引用

清涼飲料水の輸出量と金額

輸出量は順調に増加しており、清涼飲料水の海外市場は拡大傾向にあるといえます。

☆上位6カ国 向地別輸出金額の推移

次に輸出金額上位6カ国の2010年から2020年までの推移を見てみましょう。

(単位:百万円)

中国 香港 台湾 米国 オーストラリア アラブ首長国連邦
2010 2,061

1,743

1,145 2,022 303 2,934

2011

860 1,633 1,124 1,600 563 2,660
2012 2,262 2,123 1,174 1,995 700 2,092
2013 1,166 2,252 1,519 1,688 975 2,891
2014 913 2,721 1,684 1,978 1,883 4,343
2015 1,724 3,207 1,692 2,395 1,993 5,405
2016 1,931 3,571 1,960 2,711 2,358 3,133
2017 2,459 5,122 2,431 3,193 2,845 4,097
2018 4,571 7,347 2,656 3,800 3,160 1,371
2019 7,031 5,594 2,669 4,641 3,781 1,251
2020 9,825 5,114 2,882 4,594 4,011 1,627

※税関HP引用

清涼飲料水上位6カ国仕向地別輸出金額推移

2020年時点では、中国が最大の輸出相手国となっておりますが。

すでにレッドオーシャンとなっていると見るべきか、まだまだシェア獲得の余地があるのか判断が難しいところです。

今後も中国を目指すメーカーは増えていくことが予想できますが、いずれ厳しい市場(飽和状態)になる可能性があります。

 4.輸出先国(輸入国)による輸入規制 

清涼飲料水の輸出でもっとも重要な事の1つとして、輸出先国(輸入国)の輸入規制があります。

日本からの輸出はそれほど難しくありませんが、輸出先国(輸入国)側にある規制をクリアできなければ輸送は完了しません。

ここでは、主要輸出先国である「中国」「台湾」「米国」に関して解説していきます。

✍輸出先:中国

❏福島第一原子力発電所事故関連

産地により輸出の可否が異なるので事前に確認しましょう。

  • 輸出不可能地域(10都県):
    宮城県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、新潟県、長野県
  • 輸出可能地域:
    上記10都県以外 ※産地証明書が必要です。

輸出が不可能な地域の地図


❏産地証明書取得について

こちらのサイトで《産地証明書》を取得することができます。
農林水産省「その他:証明書や施設認定の申請」

※現在電子申請が可能です。システムを使用するには申請書の提出が必要で、時間もかかりますので早めに取り掛かりましょう。

💡注意!!

《産地証明書》には運送ルートを記載する項目があります。

運送ルートに輸出不可能地域(10都県)が含まれてはいけません。

輸出港までの経路も注意が必要です。

※現在、成田空港、東京港からの輸出はできません。

❏食品の製造・加工または貯蔵・保管施設(企業)の登録制度

中国へ輸出するすべての食品の製造・加工・貯蔵・保管施設は事前に中国税関総署へ登録しなければなりません。

詳細はこちら:農林水産省「中国向け輸出食品の製造等企業登録に係る企業自ら中国政府に登録が求められる品目の登録方法について」

❏中国側輸入時に必要な書類

中国での輸入の際に必要な書類は下記のとおりです。

※詳細は中国側の輸入者または通関業者に事前に確認しましょう。

  • インボイス、パッキングリスト
  • 契約書
  • AWBもしくは船荷証券
  • 産地証明書
  • 成分分析報告書(生産業者が発行)
  • 衛生証明書など
  • 一部の清涼飲料水は植物検疫証明書が必要です。
    必要な場合は、日本輸出時に植物検疫を受け、証明書を取得しましょう。

✍輸出先:台湾

❏福島第一原子力発電所事故関連

産地によって必要書類が異なります。

  • 産地証明書:47都道府県
  • 放射性物質検査報告書:
    福島県、茨城県、栃木県、群馬県、千葉県

放射性物質検査報告書が必要な地域の地図


❏産地証明書・放射性物質検査報告書取得について

こちらのサイトで《産地証明書》を取得することができます。
農林水産省「その他:証明書や施設認定の申請」

※現在電子申請が可能です。システムを使用するには申請書の提出が必要で、時間もかかりますので早めに取り掛かりましょう。

❏台湾側輸入時に必要な書類

台湾での輸入の際に必要な書類は下記のとおりです。

※詳細は台湾側の輸入者または通関業者に事前に確認しましょう。

  • インボイス、パッキングリスト
  • AWBもしくは船荷証券
  • 産地証明書
  • 放射性物質検査証明書
  • その他台湾FDAにより求められる書類

✍輸出先:米国

❏福島第一原子力発電所事故関連

2021年9月22日に規制は撤廃されました。

❏米国保健福祉省・食品医薬品局(FDA)について

米国に輸入される清涼飲料水の安全はFDAが管轄しています。

登録、通知は「FDA食品施設登録」と「FDA向け事前通知」になります。

◯FDA食品施設登録

バイオテロ法上、米国内で人や動物の消費に供するための食品を製造・加工・梱包・保管する米国内外の施設保有者、経営者またはエージェントは、日本から輸出する前に、FDAに登録することを義務付けられています。

施設登録はこちら

◯FDA向け事前通知

食品の輸出発送前に、FDAに事前通知を提出する必要があります。

密封容器(レトルトパウチ、缶詰、瓶詰など)入りの低酸性缶詰食品と酸性化食品について下記該当の清涼飲料水については、別途手続き(※1)が必要です。
米国に輸出する前に、輸出業者、現地の輸入業者等に米国輸入に問題が無いか、事前確認をして下さい。

  • 低酸性缶詰食品:水分活性が0.85より高く、pHが4.6より高い、密封・常温で流通する食品
  • 酸性化食品  :水分活性が0.85より高く、酸または酸性食品を加えることにより、pHを4.6以下の酸性状態にした加工食品を密封・常温で流通する食品

※1.別途手続き:

食品を製造・加工・梱包する施設は、食品缶詰施設登録または、オンラインのFDA産業システムによりFCE施設登録を行う必要があります。
また、それぞれの食品・容器の大きさ・種類・製造方法ごとに、殺菌条件などの製造工程に関する情報をFDAに提出しなければいけません。

事前通知はこちら

 5.輸出通関 

✍輸出通関に必要な書類

輸出通関に必要な書類は以下のとおりです。

書類名 書類作成者等
インボイス 輸出者が作成。
インコタームズ、商品名、学名、個数、単価、金額、合計金額を記載。
パッキングリスト 輸出者が作成。
商品名、材質、個数、重量を記載。

※インボイスとパッキングリストは情報が重複する部分が多いので「INVOICE&PACKING LIST」として内容を1枚に集約しても構いません。

※仕向地国が求める《産地証明書》や《放射線物質証明書》は輸出通関時に税関へ提示することはありません。

❏インボイス・パッキングリストのサンプルを用意しました。

ダウンロードしてお使いください。

☆インボイス・パッキングリストブランクフォーム
☆インボイス・パッキングリスト入力例

✍輸出HSコード ※2023年1月

❏オレンジジュース

  • 冷凍したもの:2009.11-000
  • 冷凍していないもの(ブリックス値20以下):2009.12-000
  • 冷凍していないもの(ブリックス値21以上):2009.19-000

❏グレープフルーツジュース及びポメロジュース

  • ブリックス値20以下のもの:2009.21-000
  • ブリックス値21以上のもの:2009.29-000

❏その他の柑橘類のジュース(1種類から製造)

  • ブリックス値20以下のもの:2009.31-000
  • ブリックス値21以上のもの:2009.39-000

❏パイナップルジュース

  • ブリックス値20以下のもの:2009.41-000
  • ブリックス値21以上のもの:2009.49-000

❏トマトジュース

  • 2009.50-000

❏ぶどうジュース

  • ブリックス値30以下のもの:2009.61-000
  • ブリックス値31以上のもの:2009.69-000

❏りんごジュース

  • ブリックス値20以下のもの:2009.71-000
  • ブリックス値21以上のもの:2009.79-000

❏水(天然または人造、甘味料または香料を加えていないもの

  • 鉱水及び炭酸水:2201.10-000
  • その他の水:2201.90-000

❏水(天然または人造、甘味料または香料を加えたもの

  • 鉱水及び炭酸水:2202.10-000

❏ノンアルコールビール

  • 2202.91-000

❏豆乳

  • 2202.99-010

※ブリックス値とは、果汁にどのくらいの糖分が含まれているかを示す数値です。

✍税関へ申告

インボイス・パッキングリストをもとに《輸出申告書》を作成します。

《輸出申告書》にインボイス、パッキングリスト等必要書類を添付して申告します。

審査が完了し、問題が無ければ輸出申告許可書が発行されます。

※輸出許可書は輸出者がインボイス等の輸出書類とともに5年間保存する必要があります。

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 6.輸出までの全体的な流れ 

全体的な流れをおさらいします。

  1. 日本の農林水産省に輸出先国の規制等を確認し、輸出可能か判断
  2. 輸出先国側の輸入者、通関代理店と協力し、輸出先国の規制について最終確認
  3. 産地証明、放射性物質証明書等が取得可能か確認
  4. 輸出先国の輸入者と売買契約
  5. インボイス・パッキングリストを作成
  6. 商品を輸出海港・空港の保税蔵置所に搬入
  7. 輸出通関
  8. 輸出

1から3までの事前確認が重要です。

ここがクリアにならないとそもそも輸出ができません。

輸送に関してはフォワダー、通関代理店と連携しましょう。

 7.まとめ 

世界では、日本の高い品質の食品が求められており、市場はどんどん広がっています。

しかしながら、福島第一原発事故によって、輸出が複雑化しています。

福島第一原発事故による各国の輸入規制は徐々に緩和されてきています。

いまは無理でも、いずれ規制緩和により輸出ができるようになる可能性は非常に高いです。

輸出を検討している方は、チャンスを逃さないよう、規制緩和のチェックは常に行うようにしましょう。

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些細なことでも構いません。
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