和食器、陶磁器(陶器・磁器)の輸出方法

焼き物の画像

※このページは、日本の陶器・陶磁器・和食器の輸出にチャレンジする方に最適な情報ページです。

輸出について注意すべき点などをまとめていますので、スタートする前に是非御覧ください。

 1.はじめに 

今、海外で日本食がブームになっているとニュースで見かけたことがある人も少なくないのでは無いでしょうか?

外国人に日本食が認知されるようになり、食材と併せて食卓を彩る日本の食器も注目を集めています。

中でも陶器や陶磁器は職人による伝統的な技法により繊細で美しい作品が数多く作られています。

ここではそんな日本の伝統工芸品である陶器・陶磁器の輸出方法について解説していきます。

 2.陶器、磁器とは 

陶器・磁器は使用される材料や方法が異なり、様々なブランドが存在します。

✍陶器について

  • 粘土を成形したものを焼いて出来たもの(土からできているもの)
  • 叩くと鈍い音がし、素地が荒いため吸水性が非常に高い
  • 粘土から作られた土の素朴な風合いと、あたたかみのある手作り感がある。
  • 主な産地:美濃焼・瀬戸焼・益子焼・唐津焼

✍磁器について

  • ガラス質を含む原材料(長石)を多く使用することで、薄くて透明感のある製品になります。
  • 叩くとキンキンと高い音がし、吸水性はありません。
  • 強度があり、薄くて軽い製品が作れます。
  • 主な産地:有田焼・九谷焼・波佐見焼

 3.海外の需要 

日本の陶器や陶磁器は、その文化の独自性や器自体の美しさから海外でも非常に人気があります。

財務省貿易統計から下記条件で分析してみました。

輸出相手国の選定材料として参考になれば幸いです。

  • 陶磁器製食卓用品(HSコード6911.10-110、6912.00-100)の重量と金額
  • 重量、取引金額上位8カ国
  • 期間:2017年から2021年の5年間を抜粋

✍陶磁器製品 食卓用品の輸出量と取引金額の推移

下のグラフは陶磁器製品の輸出量と取引金額の推移です。

2017年 2018年 2019年 2020年 2021年
輸出量(t) 6,700 6,045 6,058 7,242 11,521
金額(百万円) 4,024 4,217 4,218 5,798 9,183

陶磁器製品・食卓用品の輸出量と取引金額の推移

輸出量及び取引金額、ともに右肩上がりです。

和食器(陶磁器)の輸出事業は、まさに成長中の業界といえます。

✍陶磁器食卓用品輸出量:国別(上位8カ国)

下のグラフは上位8カ国の国別の輸出量の推移です。

単位:t 2017年 2018年 2019年 2020年 2021年
中華人民共和国 642 700 1,101 2,338 4,579
台湾 235 262 190 188 248
タイ 543 446 433 489 503
フィリピン 542 382 373 513 2,076
カンボジア 1,937 1,647 1,668 1,783 1,315
アメリカ合衆国 1,050 960 829 651 863
大韓民国 228 290 236 197 174
オランダ 75 96 114 146 207

陶磁器輸出量(国別上位8カ国)

輸出量は中国向けが圧倒的です。

気になるのは2020年から一気に伸びているフィリピン向けです。

オランダ向けも少量ですが順調に増えています。

2021年時点の輸出量のランキングは以下のとおりです。

  • 1位:中華人民共和国
  • 2位:フィリピン
  • 3位:カンボジア
  • 4位:アメリカ合衆国
  • 5位:タイ
  • 6位:台湾
  • 7位:オランダ
  • 8位:大韓民国

✍陶磁器食卓用品輸出金額:国別(上位8カ国)

下のグラフは上位8カ国の国別の取引金額の推移です。

単位:百万円 2017年 2018年 2019年 2020年 2021年
中華人民共和国 670 783 1,169 3,092 5,398
台湾 355 379 334 307 483
タイ 95 89 81 81 91
フィリピン 82 72 74 58 242
カンボジア 141 101 110 155 113
アメリカ合衆国 1,099 1,137 986 749 1,080
大韓民国 223 290 260 222 256
オランダ 108 112 129 152 223

陶磁器輸出金額(国別上位8カ国)

輸出量が多い中国が必然的に取引金額が大きくなっています。

その他は輸出量と取引金額が相対関係になっていません。

2021年時点の輸出金額のランキングは以下のとおりです。

  • 1位:中華人民共和国
  • 2位:アメリカ合衆国
  • 3位:台湾
  • 4位:大韓民国
  • 5位:フィリピン
  • 6位:オランダ
  • 7位:カンボジア
  • 8位:タイ

なぜ輸出量と取引金額が相対関係にならないのでしょうか?

次項のキロ単価のグラフを御覧ください。

✍陶磁器食卓用品輸出キロ単価:国別(上位8カ国)

下記のグラフは取引金額を重量で割り、キロ単価で推移を表示しています。

単位:円/kg 2017年 2018年 2019年 2020年 2021年
中華人民共和国 1,043 1,119 1,062 1,322 1,179
台湾 1,508 1,447 1,760 1,633 1,946
タイ 174 199 186 166 180
フィリピン 151 187 198 112 117
カンボジア 73 62 66 87 86
アメリカ合衆国 1,047 1,184 1,189 1,151 1,252
大韓民国 980 999 1,101 1,130 1,475
オランダ 1,433 1,161 1,135 1,042 1,078

陶磁器輸出キロ単価(国別上位8カ国)

キロ単価にするとなんと台湾が1番高い金額となっています。

2021年時点のキロ単価のランキングは

  • 1位:台湾
  • 2位:大韓民国
  • 3位:アメリカ合衆国
  • 4位:中華人民共和国
  • 5位:オランダ
  • 6位:タイ
  • 7位:フィリピン
  • 8位:カンボジア

となっています。

一概には言えませんが、高級品ほどキロ単価が高い(つまり軽くて高価)と仮定すると、

市場としては1位-2位は高級品、3位-5位は中級品、6位-8位は安価品市場と言えます。

自社製品が高級品であれば、6位-8位の国ではなかなか売れない可能性があります。

輸出相手国はどのような市場が形成されているかを調査するのは非常に重要ですので、輸出する上で参考になれば幸いです。

 4.最初に確認すること 

食器として輸出する場合、輸入国側での規制を事前に確認する必要があります。

輸入国側の法律なので、主に購入者(輸入者)が確実にクリアしておく部分ですが、知っておいて損はないでしょう。

参考までに、アメリカと中国について解説します。

✍アメリカ向けの場合

アメリカでの輸入申告の際には特別な規制はありません。

  • 輸入の際の検査は不要
  • 輸入のためのライセンス不要
  • 米国食品医薬品局(Food and Drug Administration:FDA)への事前通知、検査、認証は不要
    ※輸入の際の国の規制が無いため、製造者・卸業者・小売業者・輸入者がすべての安全性を担保しなければなりません。

❏アメリカ国内での安全基準について

アメリカでは陶磁器食器の国内販売の際に、消費者の安全を確保するため、FDAは鉛とカドミウムの溶出量に一定の基準を設けています。

このFDAガイドラインは飲食に使用される容器に対して適用され、重点的にサンプルスクリーニングが行われます。

※日本の食品衛生法で規定している溶出量測定方法とFDAの測定方法が違うため、日本で販売されている商品でもアメリカでは基準値を超える可能性があるので注意が必要です。

容器の種類 鉛 溶出量 カドミウム 溶出量
深さ25mm以内の平皿類 3.0マイクログラム/ml 0.5マイクログラム/ml
深さ25mm以上、容量1.1リットル未満の深型食器類 2.0マイクログラム/ml 0.5マイクログラム/ml
深さ25mm以上、容量1.1リットル以上の深型食器類 0.25マイクログラム/ml
容量1.1リットル以上の深型食器類 1.0マイクログラム/ml
8オンス容量程度のカップ・マグ類 0.5マイクログラム/ml
水差し類 0.5マイクログラム/ml

※銀メッキ製の容器は基準が異なりますので、確認が必要です。

❏カリフォルニア州法案

カリフォルニア州ではFDA基準値を超える鉛・カドミウムを含む製品の販売が禁止されています。

また、鉛・カドミウムが含まれる食器には製造者名もしくは輸入者名を表示しなければなりません。

さらに、カリフォルニア州ではFDA基準値よりも厳しい基準を設けており、その厳しい基準を超えている製品を販売する際には、その危険性を注意書きとして表記することが求められます。

このようにFDAとは別に州ごとに独自の規定を設けている場合がありますので、必ず事前に確認しましょう。


✍中国向けの場合

中国での食器輸入には「輸出入商品検査法」と「食品安全法」に基づき手続が行われます。

❏輸入時の手続

◎法定検査

「輸出入商品検査法」に基づき、通関地の商品検査機関で法定検査を受け、問題がなければ「入国貨物通関票」が発行されます。

これを持って税関で輸入通関手続きを行います。

  1. 法定検査対象商品(出入国検査検疫期間が検査を実施する輸出入商品目録)に含まれる輸入商品は法定検査手続を義務付けられています。
    検査検疫を受けていないものは販売、使用が認められません。
  2. 法定検査対象外の商品の場合、輸出入検査検疫機関のサンプル調査に不合格の商品は廃棄もしくは返品(積戻し)となります。
◎法定検査申告手順

現在中国では「全国検査検疫ペーパーレス化システム」の導入が進められており、このシステムを使用して申告します。

  1. 関連書類(契約書、インボイス、パッキングリスト、船荷証券等)をアップロード
  2. 検査検疫機関による審査→検査内容が確定
  3. 検査の予約をし日時、検査場所、実施機関を決定
  4. 検査検疫機関の指示する検査を受ける
  5. 検査検疫機関より「入国貨物通関表」が発行される
  6. 税関へ通関手続き

※「全国検査検疫ペーパーレス化システム」がまだ導入されていない地域では、紙ベースでの手続になります。

※その他求められる可能性のある書類
 ・食器の材質(成分)に関する説明文書
 ・原産地証明書
 ・衛生証明書等

❏販売時の手続

中国国内で食器を販売するには「食品安全法」に定める食品安全国家基準を遵守しなければなりません。

陶磁器製品はGB4806.4-2016 食品安全国家基準に該当します。

輸入食器は上記の国家基準に所定の基本要求、数量制限要求、検査方法や製品情報等に合致していなければなりません。

もし合致していないことが発覚した場合、中国取締機関による行政処分を受ける可能性がありますので、注意しましょう。

 5.梱包の注意点 

食器は割れ物なので、梱包が重要です。

国際輸送は、様々な機材を使用するため、どうしても各ターミナルで積卸しが発生します。

その際に衝撃や落下、フォークリフト等の機材による突き刺しや打撃などのダメージは大小様々発生します。
※海外では手で持てる貨物は投げられてしまうことも多々あります。

衝撃をゼロにすることは不可能なため、輸出者が梱包でリスク回避することが大切になってきます。

しかし、梱包を厳重にすればするほど重量とコストが上がっていきます。

そのため、輸送に合わせた梱包仕様を選択することが重要です。

食器の輸送で考えられる梱包仕様は以下のとおりです。

✍梱包仕様

梱包仕様 詳細

ダンボール梱包

ダンボール梱包された荷物の画像
商品をダンボールに入れて、隙間に緩衝材を入れます。
もっともシンプルで基本的な梱包になります。
※段積みが前提になるので、ダンボールは十分な強度があるものを選定しましょう。

パレタイズ梱包

パレタイズ梱包された荷物の画像

ダンボール梱包した商品をパレットに積み、ストレッチフィルムでラッピングしたもの。

トライウォール梱包

トライオールの画像

ダンボール梱包した製品をさらに強化ダンボールに入れることで、外部からの衝撃から製品を守ることができます。
重量は木製梱包よりも軽いため、航空輸送に適しています。
成田空港で対応できるサイズは、
内寸D103xW103xH136cm / 外寸D110xW110xH155cm
※D、Wは変更できませんがHに関しては最適な位置でカットすることで容積を抑えることができます。

クレート梱包
(すかし梱包)

クレート梱包された画像

ダンボール梱包した製品を木材で梱包。中身が少し見えるように梱包します。
段積みする際の強度は十分ですが、水濡れやフォークリフトの突き刺しなどは突破される可能性があります。
ケース梱包よりも重量が軽くなるというメリットがあります。
※梱包木材は「植物検疫措置に関する国際基準 ISPM No.15」をクリアしているものを使用。

ケース梱包
(密閉梱包)

ケース梱包された画像

ダンボール梱包した製品を木材で梱包。
板で完全に密閉します。
最も強度のある梱包ですが、重量も一番大きくなります。
※梱包木材は「植物検疫措置に関する国際基準 ISPM No.15」をクリアしているものを使用。

✍ラベル

貨物を扱うのは人間です。

貨物に「取扱注意ラベル」を貼り付けることで、視覚的に取扱い注意を訴えることが重要になります。

上部に張っても段積みされてしまうと見えなくなってしまいますので、ラベルの貼り付け位置は4側面に貼ります。

輸出者が貼っても良いですし、搬入倉庫に指示をしてラベル貼付けを依頼することもできます。

ラベルに厳格なフォーマットはありませんが、海外では外国人が扱いますので、日本語表記ではなく英語表記(FRAGILE、HANDLE WITH CARE)のラベルを使用しましょう。

FRAGILE 取扱注意 UPマーク

↑参考ラベル

 6.輸送について 

✍航空輸送の場合 

メリットはもちろん、「スピードが早い!」ことです。

デメリットは「コストが高い!」ことです。

以上のことから、航空輸送を使用するのは次のような商品に適しています。

  • とにかく早く届けたい!
    例えば、商談のためのサンプルなど。
  • 高価な商品を輸送。
  • 軽くて小さい商品。

梱包は以下の選定になります。

  • ダンボール梱包:軽くて少量の場合
  • パレタイズ梱包:軽くて複数個段ボールがある場合
  • トライウォールもしくはクレート梱包(すかし梱包):大量で重量がある場合
    ※重量をできるだけ軽くすることで、航空運賃を抑えることができます。

✍海上輸送の場合

❏LCL輸送の場合

LCL輸送は複数の荷主が1つのコンテナをシェアする輸送方法です。

ですので、コンテナ内では段積みされる事が前提になります。

メリットは「輸送費が安い!」です。

デメリットは「輸送時間が長い!」「段積みされるので梱包に強度が必要」です。

以上のことから、LCLを使用するのは次のような商品に適しています。

  • 輸送時間に余裕がある。
  • とにかく安く送りたい。
  • 物量はコンテナには満たないが、1m3かつ1トンくらいある。

梱包は以下の選定になります。

  • パレタイズ梱包:段積みされるので、十分な強度があるダンボールを使用すること。
  • トライオール梱包:段積みされるので、十分な強度が必要。重量は軽い方が運賃が安い。
  • クレート梱包(すかし梱包):段積みされるので、十分な強度が必要。重量は軽い方が運賃が安い。

💡補足!!

LCLの最低単位は1m3、1トンです。

例えば0.5m3、500kgでも1m3、1トンとして扱われます。

海上輸送は単位あたりの輸送運賃は安価ですが、港湾エリアでの作業料や取扱料は航空輸送と比べて高いです。

最低単位以下の物量をトータル金額で計算した場合、じつは航空輸送の費用と変わらなかったり、もしくは安かったりしますので、航空輸送もセットで検討しましょう!

❏FCL輸送の場合

コンテナ1本を単独で使用する輸送方法です。

メリットは、「コンテナを埋められれば最安!」「単独なので他の荷主を気にしなくて良い」「段積みしないでベタ置きも可」です。

デメリットは「物量が必要」「コンテナが埋まらない場合、割高」です。

以上のことからFCLを使用するのは次のような商品に適しています。

  • 輸送時間に余裕がある。
  • とにかく安く大量に送りたい。

梱包は以下の選定になります。

  • ダンボール梱包:直置きすることで、隙間をなくし、限界まで積載可能。
    ※積重ねるのでダンボールは十分な強度が必要。荷崩れしないように工夫が必要。
  • パレタイズ梱包:段積みする場合は十分な強度が必要。荷崩れ防止に優れています。

コンテナ貸し切りなので、過度な梱包は不要です。

簡単にまとめるとこのような表になります。

航空輸送 海上輸送
LCL輸送 FCL輸送
輸送時間 短い 長い 長い
輸送費
(kg単価)
高い 安い 最も安い
適している
商品
・早く届けたい
・高価
・軽くて小さい
・輸送時間に余裕がある
・安く送りたい
・輸送時間に余裕がある
・安く大量に送りたい

 7.輸出通関 

✍輸出通関に必要な書類

輸出通関に必要な書類は以下のとおりです。

書類名 書類作成者等
インボイス 輸出者が作成。
インコタームズ、商品名、学名、個数、単価、金額、合計金額を記載。
パッキングリスト 輸出者が作成。
商品名、材質、個数、重量を記載。

※インボイスとパッキングリストは情報が重複する部分が多いので「INVOICE&PACKING LIST」として内容を1枚に集約しても構いません。

❏インボイス・パッキングリストのサンプルを用意しました。

✍輸出HSコード ※2022年

❏陶磁製食卓用品、台所用品

  • 喫茶用の食卓用品:6911.10-110
  • 喫茶用以外の食卓用品:6911.10-190
  • 台所用品:6911.10-200

❏陶磁製の食卓用品、台所用品(磁器製のものを除く)

  • 食卓用品全般:6912.00-100

✍輸出申告

インボイス・パッキングリストをもとに《輸出申告書》を作成します。

《輸出申告書》にインボイス、パッキングリスト等必要書類を添付して申告します。

審査が完了し、問題が無ければ《輸出許可書》が発行されます。

※《輸出許可書》は輸出者がインボイス等の輸出書類とともに5年間保存する必要があります。

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 8.まとめ 

以上が和食器(陶磁器)の輸出で注意すべき要件になります。

少量で高級で軽くて急ぎな商品は航空輸送、重くて納品まで余裕がある場合は海上輸送を使用するなど、場面に応じて使い分けましょう。

何でもかんでも海上輸送にすると、じつは安くない場合があります。

輸送費のお見積依頼をする場合は、物量に応じて航空と海上の両方を取得するようにしましょう。

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